Ridge
概要
Ridge 回帰(L2 正則化線形回帰)は、試行データに線形モデルを当てはめ、回帰係数を応答曲面のサロゲートとして使う手法です。 フィッティングの前に各パラメータを標準化することで、係数の絶対値 |β| をそのまま各パラメータの寄与の大きさとして読めるようになります。
数式
目的関数(L2 正則化最小二乗法):
閉形式解:
対角に を足すことで逆行列が必ず存在するようになり、パラメータどうしに強い相関があっても係数が発散しません。
前処理
フィッティング前に の各列に Z スコア標準化を適用します:
パラメータごとに単位も値域も異なるため、標準化しないと値域の広いパラメータほど係数が小さく出てしまい、係数どうしを比べられなくなります。 の場合は で除算します(定数列のゼロ除算を回避)。 は平均センタリングのみです($y_c = y - \bar{y}$)。
連立方程式は Cholesky(LLT)分解(faer)で解きます。 は のとき常に対称正定値(SPD)になるため、Cholesky が最適な解法です。 数値的な理由で分解に失敗した場合は、誤った係数から誤った曲面を描くよりも安全なので、ゼロ係数ベクトルにフォールバックします。
PDP への適用
1D PDP では次の閉形式近似を使います:
標準化によって他のパラメータの平均が 0 になっているため、その寄与は PDP の計算で消えます。 2D PDP では 2 つのパラメータの項を加算します:
Ridge サロゲートは線形モデルであるため、信頼帯(上限、下限)は返しません。
R² の見方
| R² | 意味 |
|---|---|
| ≈ 1.0 | 線形モデルが良好です。曲面は信頼できます。 |
| < 0.5 | 非線形な関係があります — Random Forest または GP-FITC に切り替えます。 |
特性と限界
強み:
- 非常に高速: O(n·p²)
- L2 正則化により多重共線性に対して安定
- 係数の符号が影響の方向を示します(パラメータを増やすと目的関数が上がる/下がる)
弱み:
- 線形性を仮定:非線形効果を過小評価します
- 交互作用項なし(パラメータ間の相互作用を捉えられません)
- Random Forest / ガウス過程で可視化できる非線形構造を見逃す可能性があります
Ridge は交互作用も非線形も表現しないので、応答曲面としては「大づかみな傾き」を見るための道具になります。 ですが、係数の符号と大きさがそのまま読めるという性質は、どのパラメータをどちらに動かせば良くなるかを判断するうえで強力です。 たとえば が正で絶対値も大きければ、そのパラメータを増やすほど目的関数が大きくなり、しかも影響が大きいと読めます。
使用場面の目安
目的関数が概ね線形? → Ridge(最速)
まず大まかな近似が欲しい? → Ridge で試してから R² < 0.5 なら切り替え
非線形・ノイジー・表形式? → Random Forest
滑らかな非線形? → GP-FITC(または GP-VFE / GP-MOE)参考文献
- Hoerl, A. E., & Kennard, R. W. (1970). Ridge Regression: Biased Estimation for Nonorthogonal Problems. Technometrics, 12(1), 55–67. https://doi.org/10.1080/00401706.1970.10488634