PDP
概要
部分依存プロット(Partial Dependence Plot; PDP)は、特定のパラメータが目的関数に与える限界効果を可視化する手法です。 他のパラメータの影響を平均化することで、着目パラメータと目的関数の関係を分離して把握できます。
Tunny Dashboard では、複数のサロゲートモデルで 1D PDP と 2D PDP を計算します。 1D PDP は折れ線グラフ、2D PDP は 3D の応答曲面プロットとして表示します。
| 種別 | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| 1D PDP | パラメータ 1 つ、目的関数 1 つ | 1 変数の応答曲線 |
| 2D PDP | パラメータ 2 つ、目的関数 1 つ | 2 変数の応答曲面 |
2D PDP のサロゲートモデル
| モデル | 速度 | 品質 | 適用 N 規模 |
|---|---|---|---|
| Ridge 回帰 | < 100ms | 線形のみ | 全規模 |
| Random Forest | < 2,000ms | 非線形・不連続 | 全規模 |
| GP-FITC | < 10,000ms | 滑らか・最高品質(デフォルト GP) | 全規模(全 N 点で学習) |
| GP-VFE | < 10,000ms | 滑らか・保守的フィット | 全規模(GP-FITC が過学習の場合) |
| GP-MOE | < 30,000ms | 滑らか・多領域対応 | 不連続・レジームスイッチ |
すべての GP バリアントは egobox-gp / egobox-moe(Apache-2.0)バックエンドを使用し、M = min(N, 100) 誘導点を用います。 N ≤ 100 のとき、FITC/VFE はノイズ推定付き厳密 GP と等価になります。
理論背景
一般的な PDP の定義
モデル について、着目変数の集合 と補完変数の集合 を考えます。PDP は次のように定義されます:
すべてのトレーニングサンプルに対して x_C を周辺化(平均化)することで、x_S だけの純粋な効果を抽出します。
Tunny Dashboard での計算方法
完全なモンテカルロ評価は N × グリッド数の予測呼び出しが必要になるため、サロゲートモデルを使った近似計算を採用しています。
1D PDP(Ridge 回帰による解析的計算)
1D PDP は全パラメータで Ridge 回帰をフィッティング後、解析的に計算します:
パラメータ に着目した場合、他のパラメータ を平均値 で代入すると:
上式は、次の完全な式
において、標準化項の平均が となることを使って簡約した形です。 すなわち、Ridge 係数 β_j に比例する線形関数として解析的に表現されます。
2D PDP(複数サロゲートモデルによる計算)
2D PDP は、選択したサロゲートモデルでグリッドを計算します。Random Forest は 30×30、それ以外(Ridge、GP-FITC、GP-VFE、GP-MOE)は 20×20 です:
| モデル | 計算方法 |
|---|---|
| Ridge | 2変数線形平面: y_mean + β₁(v1−mean₁)/std₁ + β₂(v2−mean₂)/std₂ |
| Random Forest | CART+Bagging でグリッド各点を予測 |
| GP-FITC | ARD Matérn 5/2 GP(egobox-gp、FITC M=min(N,100)、全 N 点で学習) |
| GP-VFE | ARD Matérn 5/2 GP(egobox-gp、VFE 下界、M=min(N,100)、全 N 点で学習) |
| GP-MOE | 混合エキスパート GP(egobox-moe、GMM クラスタリング、最大 K=3 FITC エキスパート) |
挙動の詳細
パラメータ型に関する前提
PDP は数値パラメータのみを対象とします。 非数値(カテゴリ)列はグリッド計算上 0.0 として扱われるため、実質的に無視されます。
グリッドの構築
各パラメータの観測値の最小値〜最大値を等間隔にサンプリングしてグリッドを作ります(linspace):
グリッド点数は、モデルと次元数(1D/2D)によって異なります。 1D PDP は Ridge が 50 点、それ以外(Random Forest、GP-FITC、GP-VFE、GP-MOE)は 30 点です。 2D PDP は Random Forest が 30×30、それ以外は 20×20 です。
Z スコア標準化
Ridge 回帰前に各パラメータ列を Z スコア標準化します:
標準偏差がほぼ 0(定数列)の場合は 1.0 として扱い、ゼロ除算を避けます。
出力形式
2D PDP の応答値は、2 つのパラメータのグリッド点ごとの目的関数の予測値であり、3D サーフェスとして描画されます。
サーフェスに Show data で重ねた観測点にマウスを載せると、パラメータ値と目的値のツールチップが表示されます。 クリックするとトライアル詳細モーダルが開きます(他の 3D 散布図と同じ操作感です)。 同じ条件(モデル種別、パラメータの組み合わせ、目的関数、グリッド数)で再度開いた場合は、キャッシュされた結果がすぐに表示されます。 Study を切り替えるとキャッシュはクリアされます。
R² について
R² は、各サロゲートモデルの訓練データへの適合度を表します:
- R² ≈ 1.0: サロゲートモデルがデータをよく説明しており、PDP の信頼度が高いです
- R² < 0.5: モデルの説明力が低く、PDP は目安程度にとどめます
- R² が低い場合は、より表現力の高いモデル(滑らかな場合は GP-FITC / GP-MOE、ノイジーな場合は Random Forest / LightGBM)への切り替え、または Spearman / Sobol による感度分析を推奨します
特性・限界
Ridge 回帰(1D PDP・2D PDP デフォルト)
強み: 解析解のため高速です(< 100ms)。外挿しません。R² で信頼度を確認できます。
弱み: 線形のみです。非線形、U 字型、交互作用は捉えられません。
Random Forest
強み: 非線形で不連続な目的関数に対応します。外挿しません。
弱み: 決定木境界のアーティファクト(段差)が現れやすいです。少数サンプルでは不安定です。
GP-FITC(ガウス過程回帰、FITC 近似)
強み: 滑らかな補間です。少数サンプル(N < 50)でも高品質です。ARD で次元重要度を自動推定します。全 N 点で学習します(サブサンプリング不要)。egobox-gp バックエンド(COBYLA 10 点マルチスタート)を使います。デフォルトの GP です。
弱み: N > 100 では M = 100 の誘導点上限でコストを抑えますが、近似誤差が生じます。ノイジーなデータで過学習することがあります。
GP-VFE(Variational Free Energy 近似)
強み: GP-FITC と同じアーキテクチャです。VFE 下界によりノイズ推定がやや保守的になり、フィットがより滑らかになります。GP-FITC の曲面が過学習気味の場合に推奨します。
弱み: GP-FITC よりわずかにフィットが緩いです(参考値であり環境により変動しますが、ノイズなしベンチマークでは GP-FITC よりやや低い R² が観測される傾向があります)。
GP-MOE(混合エキスパート GP)
強み: 不連続、レジームスイッチング、多峰性の応答曲面に対応します。クラスタ数を自動選択します。滑らかな再結合で継ぎ目がありません。GP の不確実性推定を保持します。
弱み: GP-FITC / GP-VFE より学習コストが高いです(おおよそ K 倍)。学習に失敗した場合は GP-FITC にフォールバックします(PDP 時)。
使用場面の目安
2 つのパラメータが目的関数に与える複合的な影響を見たいときは、まず Importance Chart や Sensitivity Heatmap で重要なパラメータを絞り込み、上位 2 パラメータを 3D 応答曲面プロットで可視化するとよいでしょう。
サロゲートモデルの選び方の目安:
- まず高速に確認したい場合 → Ridge(デフォルト)
- R² < 0.5 で非線形、ノイジーな場合 → Random Forest または LightGBM
- 滑らかな補間で最高品質を求める場合 → GP-FITC(全 N 点で学習、デフォルト GP)
- GP-FITC が過学習気味の場合 → GP-VFE(より滑らかで保守的)
- 不連続で多領域の応答曲面 → GP-MOE
1D PDP と 2D PDP の比較
| 項目 | 1D PDP(折れ線グラフ) | 2D PDP(3D サーフェスプロット) |
|---|---|---|
| 着目変数 | パラメータ 1 つ | パラメータ 2 つ |
| 可視化形式 | 折れ線グラフ | 3D サーフェスプロット |
| 出力 | 1 変数の応答曲線 | 2 変数の応答曲面 |
| サロゲート | Ridge / Random Forest / GP-FITC / GP-VFE / GP-MOE(選択可、デフォルト Ridge) | Ridge / Random Forest / GP-FITC / GP-VFE / GP-MOE(選択可) |
| 用途 | 単一パラメータの傾向確認 | 2 変数の複合効果、最適領域の把握 |
参考文献
- Friedman, J. H. (2001). Greedy Function Approximation: A Gradient Boosting Machine. Annals of Statistics, 29(5), 1189–1232. https://doi.org/10.1214/aos/1013203451